2018年1月23日火曜日

京都・嵐山~つま先立ちの非日常体験~

2018年の年明けに、厄払いを兼ねて比叡山の旅行を計画し始めた際に、
せっかくならばと京都は嵐山「星のや京都」に泊まろうという事になった。
自分たちの生活水準からはなかなか思い切れないお宿であるが、
そもそもはこの時期にハネムーンを兼ねた海外旅行の予定していた事、
また昨年は夫の勤続20年目でもあり、その祝いもしよう、という事で
夫婦共に気持ちが大きくなり、半ば勢いで宿泊の手配を進めた。

日常から少し贅沢な体験をする事を「背伸びしてみる」と言うけれど
私たちにとって背伸びどころでは無く、つま先立ちのレベルの体験だ。
とても上質で特別な非日常体験になったので記録しておこうと思う。

京都駅から電車を乗り換えて嵐山へ。
渡月橋のたもとにある舟待合に行き、名前を告げると待合室へ案内された。

待合室でお茶をいただく。外が寒かったのでほっと一息。

手続きが終わると専用の船で宿泊施設へ案内されるのだった。
いよいよ出発。嵐山に来るたびに見掛けていた舟に自分が乗るとは。

舟での移動は約15分。
舟の上ではガラス張りの小屋のような空間の中に座るので雨風の心配はないが、
席に着くとひざ掛けと袋に入った湯たんぽが置いてあり、身も心もほっこりした。
ちょっとしたことなんだけど、嬉しくなる。

舟が進むにつれて、渡月橋や周辺の人の賑わいがどんどん小さくなっていく。
あぁ、現実から離れて行く。非日常空間に向かっていくんだ。という気持ちになる。

賑やかな街並みよ、しばしの別れだ

渡月橋を川の方から見る。

都心の高級ホテルのフロントがあえて最上階に近いフロアにあったり、
有名な旅館が大きな駅から少し離れた所にある理由を、私は最近になってわかり始めた。
日常から離れる時間を作る事で、情報過多の日常から気持ちをリセットさせる。
特別感を増長させてくれる。

「ラウンジが上の階にあるって、めんどうくさいね」
なんて言っていた20代のアフターヌーンティーデビュー期の私よ、薄っぺらいな。

同じ時間に舟に乗っていたのはお土産袋だけを持った連泊中と思しき宿泊客だった。
嵐山の街中に「ちょっと買い物してくるから舟出してくれる?」って出掛けるなんて。
くぅー!羨ましいぜ!
(実際は舟は要望ベースではなく15分毎に運航していると言っていたので、半分妄想)

星のやが見えてくる。スタッフのお出迎え。

舟を降りて、今宵の宿へ。

星のやの敷地に到着すると、そこは先ほどまでいた賑わいの街中とは別世界だった。
100年以上に建てられたという家屋が並ぶ集落。
一晩だけでもここの住民になれるのだと思うと、それだけでも十分な特別感だった。

写真の枠外だが右手前では、和楽器の音楽が迎えてくれる

日本の遊び道具が置いてあるお部屋も。

川沿いにある客室は「水辺の私邸」と名付けられているが、
その名にふさわしく、一室ごとに玄関があり、和室があり、書斎がある。


(言わずもがな、私たち夫婦が住んでいる自宅より広い)
水辺を眺めながら机に迎える書斎は夫のお気に入りで、
集中して仕事が捗ったと、得意げに言っていた。
(そもそも仕事をしてほしくなかったのだが、満足そうなので黙っておく)

部屋にテレビは無いのだが、音楽プレイヤーとお勧めのヒーリング系CDがある。
そもそもこの落ち着いた空間に賑やかなテレビは不要だと私は思うけど
寒くて窓が開けられない冬は、水の流れる音を聞くのも難しいためCDが大活躍だった。

到着後は敷地内の蔵に行くと、ウエルカムの和菓子と飲み物の振る舞いをして頂けた。

冬の和菓子なので…と言って温めた土鍋から目の前で出してくださるのもまた粋だ。
せっかくの温かい和菓子を写真に撮るのに時間を使い、
食べる頃には常温にしてしまった私はまだまだだな、と思う。
(しかも撮った写真はイマイチ)


 
時間をかけたわりに特別何でもない写真(でも撮る)

夕食もせっかくなのでと、敷地内のダイニングでいただいた。
料理のレポートは苦手なので割愛。

驚きと感動の連続だった。
出汁のように時間をかけて素材の良さを存分に引き出した日本食を食べると
私はいつも「日本人で良かった」と心から思う。
この日の夕食の時も、何度も日本人で良かったー!と呟いた。



 
 
 


あと特筆しておきたいのは、ノンアルコールのペアリングがあったことだ。
ワインや日本酒のペアリングは時々見掛けるけれど、ノンアルコールはまだ少ない。
八寸には人参ジュース、お刺身にはモヒートベース、焼き物には甘酒風など
見事に料理とマッチしている。
お酒、特にワインが苦手な私は、料理と飲み物の相性って
体験としてよくわかってなかったけど、こういう事ね、とようやく腑に落ちた。

たっぷり二時間ほどかけて夕食を頂いたあとは、お部屋でのんびり過ごした。
敷地内の蔵はバーとしてお酒が飲めるし、ラウンジも24時間自由に出入りできる。
勿体ない気もしたが、体も心も満足した私たちはゆっくり眠りについた。

ターンダウンを依頼していたお部屋には、橙湯の仕度が。


夜の雰囲気も素敵

翌朝は、朝のストレッチに参加。
少し肌寒い冬の寒さも、静かに呼吸をしながら体を伸ばすと心地よく感じた。
「日常生活では朝の時間はあわただしく過ごしてしまいがちだけれど、
時々でいいので、今日のようにゆっくりと体に空気を入れて起こしてみてくださいね」
というスタッフさんの言葉が身に染みた。

参加者は女性ばかりの中、付き合ってくれた夫よありがとう。

朝食は、予約をしていた朝鍋をお部屋でいただいた。
予約をした時間に道具を運んできたスタッフが和室に籠ること約15分
和室に立派なお鍋が用意された。


勤続20年のお祝いと伝えると、鯛の器に入ったお赤飯が。ミニサイズなのもありがたい。

野菜中心の鍋を、今日の予定などを話しながらゆっくり一時間ほどかけていただいた。

星のやの宿泊は、2泊以上が推奨されていて時期によっては1泊での予約は難しい。
今回、私たちは直前の予約だった事もあり1泊で予約が取れて駆け足の滞在になったが、
次の機会がもしあれば、やはり2泊以上滞在したい。
この非日常空間は、住むように滞在する事で本当の贅沢を感じられると思う。

そう夢を見ながらも、頭の中では予算を考えてしまうド庶民の私達だが
いつか、きっと自分自身の人間としての深みを増してまた訪れたい。
そう思う場所だった。

24時間利用可能なラウンジ。日本に関する洋書が沢山あった。













到着時・夜・出発時、何度も写真を撮った景色
どうにか帰らない方法を模索するも、諦めて舟に乗った。



現実世界への橋のような渡月橋。この後、嵐山を2時間ほど散策した。

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