2018年4月4日水曜日

女である自分

10代の頃、私は女子特有のグループ付き合いが苦手で事あるごとに男に生まれ変わりたいと思っていた。
かといって、漫画に登場するボーイッシュな子のように男の子っぽい恰好をしたり、スポーツが得意だったわけでもない。思った事をそのまま言うと次の日から仲間外れにされたり、興味のない誰かの片思いに協力するという口実で貴重な休日に遊びに付き合わされる事が嫌だった。自分の唯一の趣味である好きなゲームや音楽の話を女子のグループ内ですると白けてしまうのも苦痛だった(それは私の話がマニアックだったからなのだけれど)。その時に話し相手になるのは男子だけだったから、ただそれが楽しくて男子になりたいと思っていただけだった。男子には男子の厳しい競争社会がある事は気付いていなかった。

大人に近づくにつれて、(あたりまえだけど)男に生まれ変われない事も女子ならではうま味がある事(女子大生というだけで奢ってもらえる回数がぐっと増えた)も気付き始めて、学生生活も大学になると面倒くさいグループから離脱しても大した痛手は無く、女である自分を否定する事は無くなっていった。そしていつの間にか、女性が主役である結婚式というライフイベントに心奪われ、一日の大半を女性と関わる事に費やすウエディングプランナーの仕事をした。
プランナーの経験を通して更に興味が深まったのは、ライフスタイルによって変化する女性の価値観だった。本能的に競争して能動的に働くことがインプットされている男性以上に、女性の心理や思考は奥深い。まだぼんやりとしているけれど、女性が輝ける社会が私の理想であるし、その為に貢献できる仕事がこれから出来たらいいなと考えている。

女性である事を否定することから始まり受け入れ魅了されてきた私の読書遍歴を振り返ってみたら、やっぱり女性作家が中心だった。

それまで漫画や絵本や子供向け小説ばかり読んでいた私がエッセイを初めて読み漁ったのがさくらももこさんだった。幼少期にちびまる子ちゃんが大好きだった私は、母が録画してくれたまるちゃんを台詞を覚えられるほど繰り返し見た。「どうせ私なんて」という卑屈な精神や何かの近道を探ろうとする怠け癖や、それでも家族や友達を見捨てることはしない優しさや、いろんな口癖をまるちゃんから影響された。
さくらももこさんの実体験に基づいたまるちゃんのストーリーのより踏み込んだ内容が書いてあるエッセイを読みふけって、文字だけでこんなに感情が揺さぶられるんだと感動した事を覚えている。

大学生の頃は、とにかく色んな世界観を知りたくて本屋に山積みにされている本を文庫を中心に読んでいった。東野圭吾さんや伊坂幸太郎さんの作品が大好きで、特に伊坂さんの独特の思想には思春期の不安定な心境が何度も救われた。
そのころにデビューした湊かなえさんは処女作の「告白」から新刊が出る度に必ず買うほど大好きだし、小川糸さん、有川浩さんの本も今も新しい作品を見掛けるとつい手に取ってしまう。

大学を卒業して、林真理子さんの小説を読んで現実社会によくある問題の切り取り方がすごく面白くて作者にも強烈に興味を持った。林真理子さんの出身地である山梨県に住んでいた親近感もあり、エッセイを何冊か読んだ。自分がブスで不器用なことを嘆いても仕方ない。それでも欲しい物を手に入れる為に努力するのよ!という姿勢がまぶしくて、励まされて、なにくそ精神のエネルギーを沢山もらった。
最近出された本でも、今はSNSで誰でも好きなように意見が出来るけど、ほとんどの人が匿名ですぐに逃げられる。けれど私達作家は実名で顔も出したうえで意見をしているの。だから何か言うとすぐにネットで叩く人や炎上させる人がいるけど、こっちは死ぬ気で言ってるのよ!言うからには根拠がちゃんとあるのよ!というような事を冒頭で言っていて、本屋で立ち読みをしながら身震いがした。その日は荷物が多くて買い逃してしまったけれど、タイトルも控えなかったので見つけられず買っておけばよかったと猛烈に後悔している。やっぱり本も一期一会なんだよなぁ。私にとって林真理子さんは女性が女性として生きるための活力をくれる人だ。姿や名前を見掛けるたびに、心の中で「真理子さんがおっしゃってる!」と最上級の敬意を示している。

ちなみに社会人になってから自己啓発本やビジネス本を意識して読むようにしたけれど、ビジネス本でも特に会社での自分の在り方や仕事の仕方の本になると、著者が女性の方が断然共感できた。このあたりで改めて、男と女は根本的に違うんだと認識するようになった。

最近出会って大好きなのは益田ミリさん。初体験は旅行エッセイだったけど、それからコミックエッセイも見掛けるとすぐに手に取って読んでいる。作家という能動的な仕事をしているのに文章からうかがえる著者自身や登場人物は基本的に内向的で、それが私にとってとても共感出来て読みやすかった。
人からの目線とか気にしちゃうけど、結局は自分が楽しいとか嬉しいとか居心地いいとか、そういうことが大事なんだよな、とミリさんの本を読んで感じた。無理しないで生きる事が大事。でも、無理しない事は何も始めない事や挑戦しない事とはイコールではない。無理しない範囲で、ちょっとずつ始めていけばいいんだ、とミリさんの本の影響で最近考えるようになった。

最近の私は、女性の特権である母になる事を望み、その為にどうしたらいいか、そして自分が母になっても一人の女性として活き活きするにはどうしたらいいのんだろう?という事ばかりを考えている。その時に浮かぶのはこれまで出会った女性だったり、女性が書いた文章だったり、とにかく女性発信のものだった。色々考える内に「そういえば私、女が嫌い!女である自分が嫌だ!とずっと思ってたよなー」とふと思い出した。そして、そう言いながら女性発信の物ばかり求めていたことも。今もだけれど、自分の事って本当に見えていない、わかっていないなと思ったのでした。

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